みちてる、みちてた。

ここにいるのにここがどこだかわからなくなるから、書き留めています。Twitter→(@yoshi_mi24)

見えない糸。

 もう何年も前の話。

 うちのベランダに黒猫がよく姿を現していた。

 

 今年4月に亡くなった愛猫ステファニーの存在を野良猫たちは感じ取るアンテナでも持っていたのか、実に様々な猫がうちのベランダにはやってきた。

 

 ステファニーが亡くなってからは、ぱったりと誰一人(誰一匹?)も姿を現さなくなったのがちょっと寂しいところではある。 

 

 

*****

 

 

 話を戻すが、よく姿を見せていた黒猫。

 片目が悪いながらも立派に大きく育っていた女のコ。

 そのコのことを「クロエ」と名づけて私たち家族は呼んでいた。

 

 

「今日もクロエちゃん来てる」

「クロエが爪で網戸ガリガリしてた」

 

 

 よく見かける猫に勝手に名前をつけては、「今日は○○がのそのそ歩いてたよ」などと我が家の会話のネタにしていた。

 

 ステファニーによってもたらされた縁。

 ステファニーの存在がいつだって我が家を明るくしてくれていたのだ。

 

 

*****

 

 

 現在、野中柊さんの小説『公園通りのクロエ』を読んでいる。

 

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 タイトルにある「クロエ」と表紙に描かれた黒猫のイラストに惹かれて手に取った。

 やはり本作には、黒猫が登場する。犬も登場する。読んでいて心地がいい。

 

 今日は、本の続きを居間でうつ伏せに寝転がって読んでいた。

 すると、本とともに床に落ちていたあるものが目に飛び込んできた。

 思わず、「えっ!!」と叫ぶ。

 

 

 床に落ちていたもの。

 それは、猫のヒゲだった。

 ステファニーのヒゲだった。

 

 

 びっくりした。

 だって、居間の真ん中にヒゲがある。

 部屋の隅に掃除しきれていないステファニーの毛なら、まだ家の中にひそんでいるだろう。それがフワフワ居間の真ん中に飛んでくることもあるだろう。

 

 でも、明らかに目の前にあるのはヒゲだった。母にも見せてみたら、「ヒゲだね」と返ってくる。

 

 ステファニー! まさかこんな形で再会できるなんて。嬉しかった!

 

 視界が涙で滲んだ。

 見つけたヒゲは、仏壇の上に置いた。

 

 ありがとう。

 ちょっと臆病でかわいいステファニー。

 私はもうね、なかなか治らない猫背もあなたの形見だと思うことにするよ(笑)

 

 

 野中柊さんの作品、よくベランダに現れていた「クロエ」、そしてステファニーのヒゲ。

 

 見えない糸で繋がっているみたいに感じた。

 誰かに否定されても、私がそう感じるならそれでいいのだ。