みちてる、みちてた。

ここにいるのにここがどこだかわからなくなるから、書き留めています。Twitter→(@yoshi_mi24)

どうってこともない一日。

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・マフラー

 朝の7時台、クリニック(難病外来)へ行くため外に出る。

 かれこれ首元の寒さに1ヵ月以上耐えているのは、毎年使っているマフラーをまだ洗っていないからだ。

 

 洗濯機で洗っていいんだっけ? その場合、他の洋服とは一緒に洗わない方がいいんだっけ? アクロン的なのが必要なんだっけ? それとも手洗いしなきゃいけないんだったかな。

 

 悩みつつも悩んでいる間に冬が終わるのがベストだな、というのが本心なのだか流石に朝の寒さは身に堪える。

 

・「荷物が多いですね」

 クリニックでは、毎回採血をする。

 決して広いとは言えないクリニックのため採血室は存在せず、診察室のわきとか普段内視鏡検査で使っている処置台の上に座って採血をしてらうのだが、前年の冬の日に年配の看護師さんにこう言われた。

 

「荷物が多いですね」

 

 切なくなった。

 なんせ私自身も悩んでいたからだ。

 

 普段から使用しているショルダーバッグと処方してもらった自己注射を持ち帰るための保冷バッグは必需品。夏は軽装だからまだいいものの、冬となれば脱いだジャケットも荷物になる。マフラーをしていけば、それも荷物に変わる。そうなのだ。クリニックへ行くときマフラーを巻いていくと厄介なのだ。

 

 採血をしてもらったあとは、針を刺した箇所を「5分ほど押さえておいてください」と指示される。

 そして、押さえながら荷物を持って待合室へとすぐさま立ち去らなければならない。これが毎回至難の業なのである。というか無理がある。どうしたって荷物を持ち上げるさいに採血箇所から指を離さずをえないのだ。そうするとすかさず「しっかり押さえておいてくださいね」と看護師さんに念をおされる場合がある。待合室へと繋がる扉をわざわざ開き手で押さえてくれている看護師さんに、笑顔で。

 

 無理がある、と内心思うがここのクリニックの看護師さんは素敵な人ばかりで心地がいい。ここだけの話、看護師さんの懇切丁寧な対応に惚れたがゆえにもう転院したくはないと考えているほどなのだ。

 

 しかし、前年の冬。

 針を刺された左腕の袖がまくれたまま、右の肩にショルダーバッグと保冷バッグとジャケットとマフラーをひっかけようと慌てていた私は看護師さんが何気なく言った「荷物が多いですね」の一言に、力が抜けてへなへなと床に座り込んでしまいそうになった。何もかもを放り投げて、床に溶け込んでしまいたくなった。

 ただし、その看護師さんとは後にも先にもこのクリニックで一度しか遭遇したことがない。一度きりの巡り合わせで起きた出来事を1年も私は引きずっている。それとも根に持っているのか。

 知っている。こんな性格だから、生きづらいのだろう。

 

・採血結果報告書

 前回から採血結果が記された紙のレイアウトが変わった。

 なぜ、見にくい方へと変化をとげてしまったのだろう。謎が残る。

 

・すべてが済んだあと

 バスと電車を乗り継いで行かなきゃいけないと思うと、クリニックへ行く前日は憂鬱でたまらない。早めに行かなければ、待合室は人であふれる。座る場所がなくなり、スリッパも足りなくなる。どうかスリッパだけでも在庫を豊富にしていてほしい。

 

 新型コロナウイルスが蔓延してからは、さらに憂鬱度が増した。

  2ヵ月に一度の頻度で憂鬱なのだから、医師や看護師や事務の人たちは恐々としているだろうと想像する。医師も一箇所の病院だけで診察を行っているわけではないのだし。

 そういった想像に至るのがすべてが済んだ帰りの電車の中であることを卑怯に感じつつ、久しぶりの遠出に解放感を覚えていたのも事実だった。

 

 近所のバス停から家に着く間に、散歩中のフレンチブルドッグと目が合った。

 大きな黒い瞳が、わずかにこちらに興味を抱いてくれていた。頬が緩む。お互いに緩んでますな、と声をかけたくなる。

 

 すれ違ったあと振り返り、フレンチブルドッグの揺れるお尻をしばらく眺めていた。昼とはいえ空気が冷たいせいか、フレンチブルドッグは洋服を着ていた。

 一方で私は、朝の身に堪える寒さなどすっかり吹き飛んでいる。着ているジャケットを脱ぎたいくらいに。マフラーなど巻かなくて正解だった。どうせ電車やバスの中で鬱陶しくなる。帰りは荷物になるだけなのだから、巻かなくて正解。クリニックへ行くときは、マフラーは不要!

 だって荷物になるだけなのだから!

 ゆえにあの看護師さんが言った一言は何も間違っていないのだ。いないのだ。いないのだ。

 

 そうやって、マフラーを洗っていないことを正当化しようとしている。それとも根に持っているだけなのか。

 世の中にとって、どうってこともない私の1日。

 

by 2021年1月9日(土)