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『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ

 途中で読むのがツラくなり、ちょっと距離を置きました。

 だけどゆくえが気になって仕方がなかった。この物語に出てくる52ヘルツの声ははたして誰かに響くのか、伝わるのか、そしてどこかへ届くのか──って。

 

52ヘルツのクジラたち

52ヘルツのクジラたち

 

 

 町田そのこさんの小説『52ヘルツのクジラたち』を読みました。ネット上で話題になっていたのもありますが、タイトルになっている「52ヘルツのクジラ」とはなんだろうと興味をひかれて手に取ったのです。

 

 52ヘルツのクジラ。世界で一番孤独だと言われているクジラ。その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。誰にも届かない歌声をあげ続けているクジラは存在こそ発見されているけれど、実際の姿は今も確認されていないという。

(『52ヘルツのクジラたち』P71より引用)

 

 普通のクジラとは異なる周波数を持つクジラ。どうやらそれが「52ヘルツのクジラ」なのだそうです。

 主人公の貴瑚(キコ)は、誰にも届かないクジラの歌声を「寂しくて死にそうな時」に聴いているといいます。その歌声は過酷な記憶と体験を背負ってきた、彼女自身の声と重なっているのです。

 

 子どものときから親の虐待を受けてきた過去がある貴瑚。高校卒業後には就職が決まっていたにもかかわらず、義父の介護を強いられていました。家から逃れられない生活が続いていたのです。

 しかしあるとき、運命の出会いがおとずれます。まさに貴瑚の人生に変化をもたらす出会い。誰にも届かないはずの声が、叫びが届いた瞬間でもありました。

 けれども彼女は、すべての縁を断ち切って優しかった祖母が晩年を過ごしていた町での生活をひとり始めようとしている──。

 一体なぜなのでしょう……。

 

*****

 

 『52ヘルツのクジラたち』では貴瑚の声をキャッチする者が現れ、貴瑚は越してきた町で出会う少年の声をキャッチし、少年の声をキャッチしたとばかり思っていた貴瑚自身もまた実際は少年から声をキャッチしてもらっていた──という流れがあります。

 

 キャッチするのみなら、私たちも日頃どこかでかすかにキャッチしているのかもしれません。ただ安易にキャッチするだけでは、「その声は誰なの?」と歩み寄っていく勇気までを持てなかったり…。

 

 単に「心の叫びが届いた」「救われた」で物語は幕を閉じるのではなく、声に耳を傾けられた先に未来を紡げるような知恵や経験が実は周りにはあった、と気づけるところにこの小説の救いを見たように感じます。

 ツラくなって一度は本を閉じてたけれど、最後まで読まなかったらただただツラいままこの物語が自分のなかで途切れてしまっていました。

 

 町田そのこさんの小説を読むのははじめてだったので、他の作品も是非読んでみたいです。