みちてる、みちてた。

ここにいるのにここがどこだかわからなくなるから、書き留めています。Twitter→(@yoshi_mi24)

蜂の仲間へ告ぐ。

 夕方一匹の蜂がベランダに出現したことにより一騒動あった。


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 母がベランダで洗濯物を取り込んでいたときのことだ。

 虫網の中で暴れるトンボの羽音くらいの慌ただしい羽音が、ベランダと繋がった部屋にいた私の耳にも鮮烈にこだましたため背筋が凍った。

 

 とにかく自分は、些細な出来事にも「え"ぇっ、何! 今の何なのぉぉぉ!?」とうざいくらいへっぴり腰でビビり倒す性分である。それほどビビりではなくとも、虫の羽音は生理的に受けつけない方も多かろう。

 

 母も異様なその羽音に、一度窓を閉めた。それから窓を隔てて外の様子を確認した。すると「あれ、蜂よね?」とベランダの床に向かって指をさす。恐る恐る母のもとへ近づき私も窓越しに外を確認してみると、まさに「あれは蜂」だった。

 ミツバチよりは大きく、スズメバチほどではない。いったい何バチなのだろう、と画像検索までして調べようという気持ちもわかない。

 

 ざっと見る限り蜂は一匹しか見当たらなかった。とはいえ、昨年だったか一昨年だったか、近所でスズメバチの巣が見つかり「危険!」の貼り紙がつけられていた木を思い出す。あのあと処理されたらしいが、危険だけは煽っておいて「無事撤去いたしました」等のアナウンスがいっさいないのはいかがなものかと首を傾げた記憶がある。

 

 我が家のベランダに舞い降りた蜂一族の巣が、近くにないとも限らない。もうそれだけで恐怖だった。明日からどうやって洗濯物を干せばいいのか。

 嫌だなぁ嫌だなぁとあわあわする娘の隣で、母は蜂に向かってキン○ョールを噴射するとか言い出し始める。

 もちろん「やめてぇぇぇ(;´Д`)」と懇願した。そばで蜂の仲間が見ているかもしれない。返り討ちに合うかもしれない。やるなら網戸越しがいいのでは? と提案したものの、却下された。直で噴射すると言う。

 あまりの恐ろしさに、私は廊下へ避難した。母がベランダでキン○ョールを噴射している音が、悲しくもシュールだった。

 

*****

 

 その後、蜂は力尽きたようだ。

 どこから飛んできたのかわからぬが、我が家のベランダに舞い降りてきてしまったばかりに……アーメン。

 

 思い返せば窓越しで見た蜂は、脚で顔を拭うような可愛らしい仕草をしていた。スズメバチ的なギラギラ感がなく、黄と黒の縞々模様の部分がミツバチのようにふわふわしてもいた。

 思い返せば思い返すほど、申し訳なくなってくる。刺されるのが怖くて先手を打った。先手を打つ強靭さがうちの母にはあった。この母の背に守られていたから、私はここまで生きてこられたのだろう。

 

 どうか蜂には、成仏してほしい。

 そして早急に仲間へ伝えてほしい。「あのベランダには近づくな!」と。