燃え殻さんの私小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』。
映像化された同作品は、11/5(金)からNetflixで配信&劇場上映がスタートしている。
2017年。読んでいるそばからハートを、記憶を、射貫かれていた私はこの作品が好きだ。
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本日映画を観に行ったのも原作が好きだからというのが大きな理由でだったけれど、鑑賞中は主人公の佐藤誠に燃え殻さんの影を照らし合わせたりはせず(そういうのが器用に出来ないだけかもしれない……)、映し出されるままに森山未来さん演じる佐藤誠の現在と過去を見つめていた。
主人公とはまったく違う道を歩んできたし、原宿や渋谷にも縁がなく、小沢健二の歌もじっくり聴いたことはない。
だけど、こんなにも懐かしくてたまらないのはどうしてなんだろう。
もう交差することはないかもしれない互いの人生が、交差していた時代。あのころが特別よかったわけではなく、最悪に最低だったわけでもなく。なんだかんだ「普通」だった。周りに「普通だね」と視線を送り、過剰な自意識を発動させるほどに普通だった。
誠とかおりがラフォーレ原宿の前で待ち合わせをして出会うシーンは、小説を読んだときにはそこまで感じなかった恥ずかしさと照れからカッと顔が熱くなってしまった。過剰な自意識に心当たりがありまくるから、だ。
1995年からコロナ禍にある現代まで演じる俳優さんは同じままなのに、表情や話し方、立ち居振る舞いが時代時代を表しているのもすごかった。
原作にはない物語の流れがあって、誠と一緒に工場で働いていた七瀬が、映画を見終わり何時間か経つ今でも頭の中で強い存在感を放っている。
もう一度、観に行きたいな。
唯一の安全地帯が私にも確かにあった。
「うれしい時に、かなしい気持ちになるの」
かおりの言葉にボロボロ流れる涙が、マスクの中へ侵入していった。
もう一度、観たい。
映画が終わるなり現実に戻った私は、パンフレットや関連グッズを眺める余裕もなく建物から出てきてしまった。
バカだなと思う。
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すっごくどいでもいい話だけれど、映画を観に行くのに、スカート&ストッキングを4年ぶりに履いた。(4年間ほぼひきこもりでした)
いつかまた履くときが来る……と信じていたというより信じていたくて、大量に洋服を捨てたときにスカートだけは残していた。
その「いつかまた」が今日だった。
本当は大声で「ありがとう!!」を伝えたい。原作者の燃え殻さんをはじめ、映像化に携わったすべての人たちへ。
ありがとうございます。
ああ。
もう一度、観に行きたいな。