みちてる、みちてた。

ここにいるのにここがどこだかわからなくなるから、書き留めています。Twitter→(@yoshi_mi24)

耳がダンボになる瞬間。

 

 面談をしていた。

 今週月曜のことだ。

 向かいに座るのは、生活支援センターの担当者さん。新型コロナの感染対策のため、ドアが開け放たれたスタイルで毎回面談は行われる。

 

 たとえば最近は、家を出てひとり暮らしをするための相談に面談の時間をほぼ費やしている。

 

*****

 

 月曜日も、その件を含めた面談をする予定があった。

 

 しかし担当者さんが面談室に入ってきて間もなくだったと思う。

 開け放たれたドアの向こうから聞こえてきた声に、私の意識が吸い寄せられてしまったのである。

 

 担当者さんは、ひとり暮らしをするにあたっての不安や疑問を私に問いかけてくれていたと記憶しているが、面談室の外で電話対応している職員の声がビンビン脳に響き、身体と意識が解離しているような妙な感覚に襲われた。

 

 「今は向かい合っている相手の質問に答えなければ」と思うのに、外から入ってくる情報に頭が占拠されてしまう。

 どうも職員の電話対応を聞いていると、私の担当をしてくださっている方に電話を繋いでほしい利用者さんが、何度も電話をかけてきているようなのだ。

 そのたびに、「○○さんは、現在面談中なので電話に出られないんですよ」と職員が対応しているのがわかる。

 

 あ、その面談相手って私だ──。

 

 ドキッとしてしまったがゆえに、外から漏れ聞こえてくる声から目が……ではなく耳が離せなくなってしまったのだろう。

 きっと電話をかけてきていた利用者さんは、「○○さんを出してほしい」「面談は何時に終わるのか」等を幾度も職員に聞いていたに違いない。対応する職員も「だーかーらー、○○さんは面談中だってさっきも伝えたでしょ」とその利用者さんの性格を理解しているためか対応には慣れている様子だった。

 

 とはいえこちらは、「はやく面談を終わらせなければならないのでは……」と焦るばかりだった。すると余計に言葉が詰まる。詰まった拍子に頭が真っ白になり、腰を据えて親身になってくれている○○さんが不思議に見えてきさえした。いや、不思議でおかしいのは自分の方なわけでなんとも失礼な話だけども。

 

 「面談は○時くらいに終わると思う」と一本前の電話で告げられていた利用者さん。私は壁にかかった時計が気になって仕方なかった。

 集中できないながらも、担当者さんが出してくれたある提案をきっかけに光を見た私は、ある程度今後の予定をどう立てていくか流れを掴めたことに安堵していた。

 安堵していたところで面談終了予定の時刻に達しており、案の定面談室の外で鳴り出した電話の着信音。

 

 再びドキッとした。

 「○時くらいに面談が終わるとは伝えましたが、○時きっちりに終わるとは伝えていませんよね」

 対応している職員がやけに冷静で事務的な声になっているのが、少しこわかった。

 そして、再び意識が面談室の外へ持っていかれる。罪を犯しているような気分で硬直している私とは打って変わり、担当者さんは「最近はひとり暮らしに向けてのお話しかできてないですよね。他に話しておきたいこととかないですか」とやはり腰を据えて構えてくれている。福祉作業所はどんな感じですか、今はどんな作業しているんですか……etc.

 涙がちょちょ切れるほど本来ならありがたい気遣いが、このときばかりは「○時を過ぎてしまった、○時を過ぎてしまった、○時を過ぎてしまった」呪縛で私は息苦しくなっていた。

 

*****

 

 せっかく設けてもらった面談時間。半分以上は頭が真っ白状態で、負わなくてもいい罪を背負うはめになるとは想像していなかった。

 

 あれから時間が経過し現在木曜なのだが、あの身体と意識が解離する居心地の悪い感覚……そういえば職場では日常だったと思い出す。

 

 福祉作業所内でも周りの会話はしっかり聞こえてくるし、内容を把握しながら私は作業をしている。ただ、そこで聞こえてくる会話は他愛もない話ばかりだから気になるようで気にせずにいられるのだ。

 

 これは聴覚過敏が、関係しているのか。

 耳がダンボになり、尚且自分が責められているように感じたときは要注意である。